【開催レポート】
//scholar.tokyo/vol3/
■イベント概要
百科事典やステレオセットのかわりにウィキペディアやiPodが使われ、街角からは公衆電話が、そして駅から切符が消えつつあります。しかし、ハードウェアやネットワークの進歩によって本当に必要なものだけが残る傾向が強まっている一方、本来使いにくいはずの「便利」を当たり前のように受け入れているという現状も数多く存在します。
その代表例がスマートフォンでしょう。財布を太らせる元凶になっている各種のカードも、適切な個人認証が出来れば不要ですし、番組や音楽を自由に楽しむことができるならば、リモコンなどいらないと考えてほしいのです。生活の一部として定着しているものは“便利”だという発想が生まれやすいのですが、ここ数十年は軽量化による処理速度の向上など、小さな変化しか見られません。現状に満足し、改良の必要があると考える人が少ないのです。
現在は、機械の操作を苦手とする人間がコンピュータの最大ターゲットユーザですから、機能はシンプルであるべきですが、より複雑化することで時代に逆行しています。両親や祖父母世代でも使えるスマホはありません。スマホを契約しようとすると販売店では信じられないくらい長時間待たされ、説明に30分以上を必要とします。制度のインタフェースもどこか間違っているのです。コンピュータの使われ方が質的に大きく転換しつつあるのに、コンピュータを利用する方法に質的な大きな変化が起こっていないというのは情けない話です。
この問題を根本的に考えてみるための講義を行います。併せて、「べき分布」(いわゆるロングテール)になりがちなサービスで多様性を確保する手段についても議論したいと考えています。
■講師紹介
慶應義塾大学 環境情報学部 教授
増井 俊之 (ますい としゆき)
1959年生まれ。東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所などでの研究生活を経て、米AppleでiPhoneの日本語入力システムを開発した後、2009年より現職。携帯電話に搭載された日本語予測変換システム『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザーインターフェース研究の第一人者。近著『スマホに満足してますか?』(光文社)では、認知心理学および実世界指向インタフェースの視点から、現在のスマホブームに警鐘を鳴らしつつ、画期的な新しい視点を提供中。
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