REPORT2022.12.20

「SPECIAL SESSION by stu」イベントレポート 第2弾

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11月11日(金)、株式会社stuが渋谷未来デザインとパートナーを組み、「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2022」内で「SPECIAL SESSION by stu」を開催しました。 このSOCIAL INNOVATION WEEKは、「アイデアと触れ合う、渋谷の6日間。」として、日本最大級のソーシャルデザインをテーマにしています。 その中でstuは、3つのセッションを実施。先端技術とクリエイティブをかけ合わせることで広がる可能性について、各方面の有識者が集まり、議論を交わしました。 今回はそのSESSION 2の様子をレポートします。
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SESSION 2は「渋谷クリエイター制度」(仮称)構想発表。
次世代のクリエイターを支援していくためにどんな取り組みをするべきかを話し合う、公開アイデア会議を行いました。
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<登壇者>
里村 明洋 氏(アドビ株式会社 常務執行役員 兼 CMO)
柿本ケンサク 氏(映像作家)
長田新子 氏(一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長)
ローレン・ローズ・コーカー 氏(株式会社stu COO)
モデレーター:黒田貴泰 氏(株式会社stu CEO)

この「渋谷クリエイター制度」の構想は、stuと渋谷未来デザインの持っている技術や知見、場所などを使って、クリエイターたちにもっとクオリティーと自由度が高くて実現性が低いものを形にできるような支援をしていきたいという思いから始まったそう。stuと渋谷未来デザインでクリエイター支援のモデルケースを作り、それを渋谷区が引き継ぐという形を目指しています。

まず、里村さんが日本のクリエイターの現状について問題提起しました。
「アドビ社で9ヶ国を選び、今のクリエイティビティの現状をリサーチした。クリエイターの定義は1ヶ月に1回以上デジタルかソーシャルでポストする人。今、そのクリエイターが9ヶ国で3億人いる。2年前は1億5000万人だった。倍になっているが、増えている割合が大きいのは韓国とブラジル。なぜなのか? ブラジルのようなラテン系はポジティブなムードで、自分自身をクリエイティブだと思う人が多い。この2年間でデジタル化が進んだことで、その人たちが表現する場が一気に増えたことが理由になっている。それに対して、韓国はポジティブな人は少ないが、クリエイティブなコンテンツをビジネスとしていきたい人が多く、日本はポジティブな人が少ない上にクリエイターの時給が低い。この結果からも分かるように、クリエイターの社会的な価値向上は必須。本当にサポートが必要な状況になっている。」

クリエイターの社会的地位の向上が必要だと考えさせられる中、アメリカ出身のローレンさんは22歳で日本に来た時に、日本の就職活動の文化に驚いたそう。
「22歳で仕事を見つけないと終わりという風潮がプレッシャー。100%クリエイティブな道を選ぶと社会からドロップアウトした印象になってしまうこともある。日本でクリエイターが社会的にリスペクトされているように感じない。」

映像作家の柿本さんはクリエイター目線から「日本は分かるものしか良しとされない。分からないものは敬遠されがち。クリエイターが増えている国は分からないものを受け入れる度量があるのかもしれない。」と話しました。

それを受けて里村さんは「YouTubeやTikTokも最初はよく分からないものとされていたが、今はみんなが参加し始めて楽しめるものになっている。新しいことをどんどんサポートしていけるような風潮や制度を作ることが大事。」とサポートの重要性を強調しました。

行政の支援について、黒田さんはこう語ります。
「行政が支援して推進していくという事例がすでに諸外国にある。エンターテイメントコンテンツは、食やファッションなどいろいろな文化につながっていくので、クリエイティビティが国際競争力を失うということは、その国の文化自体が競争力を失うことと直結する。文化水準が諸外国に置いて行かれるのではないかという懸念を持ち、行政にはもう少し危機感を持って受け止めてもらいたい。」

またコロナ禍になり、日本に目を向けた柿本さん。クリエイティブ活動にも変化があったそう。
「わざわざ編集室に行かなくても、家で編集ができるようになった。人が集まらなくてもコンテンツが作れる時代になったことで、人と直接話してインプットする機会が減り、クリエイティブのレベルが上がらなくなった。そこで黒田さんと一緒にもともと作っていた編集室をさらにアップデートして、普段関わらない異業種の人たちが集まって化学反応が起こる場所を作りたいと思っている。

最後に今回のセッションを通して、柿村さんは「わけが分からないものからしか革命は起こらない。分からないものを良しとする、そういう風潮を渋谷から生み出していけたら。」と話し、長田さんは「渋谷区のスローガンは"違いを力に変える"。いろいろな違いを力にして、この渋谷からスタートしていきたい。」と締めました。

今の日本のクリエイターの現状、課題、そして進むべき未来がそれぞれの目線で話し合われた良いセッションとなりました。今後、どのように日本のクリエイティブが発展していくのかが期待されます。

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