REPORT2023.03.20

二子玉川5Gコミュニティプロジェクト意見交換会 レポート

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2月10日(金)、東京都市大学 二子玉川夢キャンパスにて、「二子玉川を愛し学びあう交流会~二子玉川5Gコミュニティプロジェクト意見交換会と基調講演『二子玉川の歴史と未来』~」が開催されました。5Gコミュニティプロジェクトの関係者が、2021年より二子玉川で行ってきた都市DXプラットフォームの技術実証の成果についてプレゼンテーションとディスカッションを実施。今回はリアル会場とオンラインでの開催となりました。
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まず、一般社団法人二子玉川エリアマネジメンツ代表理事の佐藤正一氏が二子玉川学会について説明しました。二子玉川学会とは、「二子玉川を愛し学びあう交流会」の略称。二子玉川街情報プロジェクトとして2017年度に行われた大学との連携活動をきっかけに始まり、2019年に第1回二子玉川学会が開催されました。その後は、月に1回のペースで取り組みについての発表を実施。近年のコロナ禍ではオンラインで開催されていましたが、37回目となる今回、久しぶりに夢キャンパスでの開催が実現しました。

次に、東京都市大学の西山敏樹先生による基調講演「二子玉川の歴史と未来」が行われました。テーマは「SDGs時代の二子玉川をどう創るか?」。西山先生は、スペキュラティヴ・デザイン(これまでとは違った新たな視点で物事を見つめるデザインのひとつの立場)の考え方で、未来の選択肢を多面的にあげ、将来の対応策を検討していくことが重要だといいます。また、電気自動車や電動バスなどのさまざまな電動モビリティや自動運転の例について紹介。それらの技術、制度、都市生活者の価値観。この3つのバランスが大事であり、学際的に都市づくりを考えていく必要があると語りました。そして、常識的ではない「物議を醸す方法」が革新性をもたらす第一歩となり、まずは「こうもあるべき」ということを視覚化すること。これらが二子玉川の未来を考えていく上でも大事である、と締めくくりました。

そして、5Gプロジェクト参加企業より5G実証実験成果報告が行われました。まずは、我がインフォシティグループの高野雅晴氏が5Gや「Tokyo 5G Boosters Project」について説明。

続いて、5Gプロジェクトの連携事業者である東急株式会社がこのプロジェクトに参加した経緯について、東急株式会社の根本氏が説明しました。
「東急自体はまちづくりの会社ですが、ケーブルテレビなど情報通信との関わりも大きい会社。そんな中、2019年の鉄道事業分社化を機に、東急として今後どのような姿を目指していくかということを考えたところ、従来の“郊外に住んで都心に通う”というモデルではなく、“お住まいを中心とした小さい生活圏の中で生活機能を享受していく”モデルを目指したいと考えました。これを我々は“自律分散型のまちづくり”と呼んでおり、どこにいても『働く』『遊ぶ』『学ぶ』などを可能にするためには情報通信環境の向上が必須。我々は皆さまと交流するリアルな場の提供は得意としていますが、最新技術に強いわけではないので、ぜひともプロの方たちと協力して新しいまちづくりを実現していきたい。そういった思いから、この5Gプロジェクトに参加させていただきました。」

そして高野氏が、人と人とのつながりを軸としたコミュニティ活動によって変革を積み重ねる、都市のDX推進プロジェクト「DX Yourself」について説明。過去に二子玉川で行った実証実験についても紹介しました。

また、これまでの実証実験には間に合いませんでしたが、KDDIが制作した新たなAR体験について、KDDIの冨林氏が実際にスマホの画面を共有しながら説明しました。

「こちらはGoogleが提供しているAPIを使って、自分がどの位置にいるかを正確に推測することができるVPSと呼ばれる技術です。これを使い、二子玉川の商店街にあるハートストリートに描かれたハートのアートをデジタルアーカイブ化して、実際に見てまわることができるという体験をデモとして制作しました。空間に浮かんでいるハートに近づいていくと、そこに掲載されていたハートのアートを見ることができます。そしてタップすると、そのアートを作成したアーティスト名や店舗の名称が分かります。スマホを片手に街を歩くと、普段は見ることのできない街の様子がうかがえる。この新しい技術を実際の街のイベントで体験できるようにしていきたいと考えています。」

そして、ここからはインフォシティグループが支援するスタートアップ企業が、それぞれの取り組みについて紹介しました。
まず、Connected Design株式会社の林田氏。
「Connected Designでは、二子玉川ライズさんにご協力いただき、商業施設のトイレの利用状況を可視化するための取り組みを行っています。トイレの各個室に開閉検知のドアセンサーを設置し、通信のためのゲートウェイをトイレスペースに1台設置。これにより利用状況がリアルタイムで可視化され、その情報が履歴として残ります。さらに、トイレの空き情報だけではなく、個室の長期滞在や備品の補充が必要などのボタンデバイス情報も取得可能になります。今は、施設管理者の方にサービスを提供していますが、これを実際の利用者の方が見られるように進めていく予定です。5Gを使ったサービスにIoTを通して得た情報を組み込むことで、また情報のあり方も変わっていくと思いますので、その変化をこのプロジェクトで見ていきたいと思います。

続いて、MasterVisions株式会社の澤山氏。
「我々の会社は、自分の見たいアングルであらゆるシーンを自由に見ることができる自由視点というものを撮影して配信しています。これまではスポーツやエンターテイメントで活用していましたが、5Gが浸透していく中で“街中でいろんな人に使ってもらいたい”と思い、この二子玉川プロジェクトに参加させていただきました。その中で、ダンススクールの『FIVE o DANCE STUDIO』さんと一緒に、レッスンと発表会での活用を実施。生徒さんや親御さんから『一人ひとりの動きがどの角度からもしっかり確認できてとてもよかった』とのお声をいただきました。今後は、2種類の動画比較や書き込みメモ・ボイスメモのような機能を追加。さらにボタン一つで撮影を可能にし、世界とつながれる場所を増やしたいと考えています。そこで早速、台湾のゲームセンターに世界初の自由視点プリクラ機を設置しました。我々が提供するものは、映像技術ではなくシーンを保存・共有できる、ただの“ステージ”です。これは二子玉川と全国各地、世界各国がつながる入口に過ぎません。使って、触って、楽しんでもらう。まさに『DX Yourself』ということで皆さんと一緒に新しいものを作っていきたいと思っています。

続いて、ハワイ滞在中のためリモートで参加したテレポート株式会社の平野氏は、ビヨンドブロックチェーン株式会社の真野氏とコラボし、前半は真野氏が制作したVR空間からお話しました。このVR空間は二子玉川商店街を再現したもの。国土交通省の出している3Dデータを簡易的に飾り付けしたのだといいます。あたかも自分がその街に立って歩いているかのように体験できるので、このようなデジタルツインをまちづくりにも活用していけるのではないかと真野氏はいいます。

そして後半は、平野氏がテレポートの取り組みについて紹介しました。
「僕が作っているテレポートは、パソコンでアクセスするとチャットやビデオコミュニケーション、ドキュメント管理、タスク管理などができるというもの。これを使って、2023年度にこの二子玉川プロジェクトでやりたいことが3つあります。1つ目はテレポート上に編集部ルームを作ること。2つ目は、そのルーム内にあるチャットとカードを使って取材をして記事を集めること。カードとはメモをしたり、写真を貼ったり、さまざまなことに使える機能です。そして3つ目はステージ機能というものを使ってウェブサイトやサイネージを公開すること。これらの大きなポイントは“参加型で作れる”ということです。DXというのは特別なスキルや大きな予算がないとできないということはありません。本当にやりたい人たちで集まって、楽しんでやっていく。街に暮らす人たちの情報をみんなで投稿して集めて共有する、いわゆる『DX Yourself』で今後もまちづくりをしていきたいと思います。」

ここで休憩時間に入り、実際にデモで体験する時間が設けられました。それぞれが最新技術を触って体感し、参加者同士で話し合うなど、コミュニケーションが取れる場となりました。

その後、2023年度の取り組みの方向性について話し合いが行われました。

この5Gプロジェクトで重要なことは、デジタルを人と人とを繋ぐためにどう活用するかということ。そこで、まずはハートアーティストの西村公一氏が、まさに人と人とを繋いでいる『フタコハートストリート』の取り組みについてお話しました。
「フタコハートストリートの始まりは、2015年に佐藤正一さんが主催したワークショップ。私がマスキングテープでウィンドウにハートを作ったところ、それを気に入った佐藤さんから『ハートで商店街をいっぱいにしたい』というアイデアをもらい、始まりました。このフタコハートストリートの特徴は、“みんなで考えて作ってきた”ということ。だからこそアーティストの独りよがりにならずに、街に調和するアートを作り続けることができ、全国各地に広げることができました。ハートストリートを通して、共有と対話が生まれるまちづくりが実現できる。去年の11月3日には、フタコハートマルシェやダンス発表会、けん玉チームとのコラボなど、いろいろなコンテンツと繋げることができました。今後もただハートを作って街に並べるのではなく、さまざまなコンテンツを引き寄せるような魅力を持ち続けることが重要。これにDXなどの技術をかけ合わせれば、他の都市にもアピールできるのではないかと思います。」

それから、会場とオンラインでの参加者が、それぞれのやっている取り組みや二子玉川をどのような街にしていきたいか、今回の感想などを話し合いました。

最後に、佐藤氏が「情報とは、情けに報いること。それはただ技術が進めばいいということではなく、人と人とのつながりの中に技術が組み合わさることで生まれるもの。今回のように活動を見える化し、街を見える化させていくことで、今後もますます発展させていきたい。」と締めました。

今回、久しぶりに夢キャンパスでの開催となった二子玉川学会。それぞれのまちづくりにおける取り組みをみんなで共有できる、非常に有意義な時間となりました。5G技術×人のつながり。いろいろな力を組み合わせて、まさに『DX Yourself』で街を作っていくことが大事だと改めて感じさせられる会となりました。これを踏まえて、今後はどのように新しいまちづくりを実現していくのか? 二子玉川の未来が楽しみです!

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