MUTEK.JP「AI魔法学校と神話的メタバースの世界」現場レポート
12月10日(土)、昨年のMUTEKに続く「学際的プロジェクト」の第二弾として「AI魔法学校と神話的メタバースの世界・ワークショップ&トークセッション」が渋谷ストリームホールにて開催されました。
今回のプロジェクトは、各界の教授陣によるPod Cast公開授業、MidjourneyのAI魔法学校ワークショップ、Hiroshi Watanabe、Ittiらアーティストによるステージライブの3つの構成で行われました。AIやVRを活用して出現させたメタバース・ライブ空間の中で、さまざまなジャンルの人々がそれぞれの考えやパフォーマンスを自由に表現。会場には50人ほどの人たちが集まり、非常に内容の濃い3時間となりました。このイベントにTokyo 5G Boosters Projectの開発プロモーターである我々インフォシティグループと日清紡、そしてそれぞれの支援先スタートアップ企業が参加。その当日の様子をお届けします!
>イベントの詳細はこちら
>昨年のMUTEKレポートはこちら
司会進行を務めたのは、スタートアップ企業の1社である、テレポート株式会社・平野友康氏。
第1部のアーティストステージ1では、DJ・Hiroshi Watanabe とkinomalabo(仏像彫刻師/VRアーティスト・真野明日人氏とダンサー・てらにしあい氏によるアートユニット)が実験的パフォーマンスを披露。現実世界とVR世界を合成し、ダンスの身体表現によってメタバース空間に彫刻アートを出現させる演出は独特な世界観を作り出し、メタバースの新たな可能性を感じるステージでした。
第2部は、AI魔法学校のワークショップ。Midjourneyを使った作品の数々を紹介しながら、AIの飛躍的な進歩について語りました。Midjourneyとは、文章で指示した通りにAIが画像を生成してくれるサービスで、当イベントのメインビジュアルの生成にも使われています。今回、実際にその場で出たキーワードをもとに文章を作成し、画像を作成する時間も設けられました。VRアーティストのかふあ氏は「Midjourneyは誰でもできて、みんなが楽しめる。意図する画像に近づくと、ようやく深い神話の世界に入ることができる。」と話しました。AIで生み出すアート作品はどれも興味深く、今後さらなるAIの発展にも注目です。
また今回、会場にはローカル5Gやメタバースに関わる新たなテクノロジーを展示。各社が簡単にプレゼンを行いました。
音響系のビジネスを行うNTTソノリティは、耳元だけに音を閉じ込めるPSZ(パーソナライズド・サウンド・ゾーン)技術を活用した「パーソナルイヤースピーカー」を紹介。これは耳をふさがないのに音漏れしにくく、人と話しやすいイヤホンとなっているそう。さらに、音を仕分けて必要な声だけを抽出する「インテリジェントマイク」搭載のビームマイクスピーカー「LinkShell」についても紹介しました。
そして、スタートアップ企業の1社である株式会社 FLARE SYSTEMSは、ローカル5Gソフトウェア基地局を会場に設置。これにより5Gの電波を出すことができ、ワイヤレスでいろいろな実験ができるようになると説明しました。
その後、第3部では、「神話的メタバースの世界」と題してPodCast公開授業を実施。6つのテーマで、それぞれ20分間の議論が行われました。
この公開授業にスタートアップ企業の1社であるビヨンドブロックチェーン株式会社ファウンダーの斉藤賢爾氏もリモートで参加。未来思考「みんなのメタ・ネイチャー論」とVR「アカキャンせずにはいられないっ!」という2つのテーマで見解を述べました。
まず、斉藤氏は『メタ・ネイチャー』について説明。
「『メタ・ネイチャー』とは、テクノロジーによる自動化が進み、社会環境と自然環境の区別がつかなくなっていく世界のこと。ヒトの本分と考えられていた知的活動の多くが機械とアルゴリズムによって置き換わり、自動化が拡大する。それによって鉛筆1本でさえ多くの人々の分業で生産するような現代の社会環境に代わり、言わば鉛筆が木に生(な)るような新しい自然環境が生まれる。そういった新しい世界へと移行するために、我々人間はこれから知識や経験を積み上げていく必要がある。」と話しました。
次に、斉藤氏はアカデミーキャンプについてプレゼン。
アカデミーキャンプとは、2011年の東日本大震災と東電福島第一原発事故をきっかけに、福島の子どもたちのためのキャンプとして始まった取り組みです。もともと福島でリアルキャンプを行っていたものの、コロナ禍になったためリモートキャンプを開始。そこからVRでいろいろな世界を表現していく活動が行われるようになりました。この日もメタバース空間の中でプレゼンを行った斉藤氏ですが、このメタバース空間は、当日コロナウイルス感染のため療養中だった斉藤氏が、自身の体の中でウイルスを退治している世界をVRで表現したもの。これもアカデミーキャンプで子どもたちと一緒に作ったものだといいます。斉藤氏はアカデミーキャンプについて、「子どもたちがお客さんとして何か出来合いのものを体験するということではなく、体験するための環境自体をみんなで作っている。このVR制作についても、決して子どもたちに教える会ではなく、みんなで一緒に作り上げていく会であり、それがおもしろい。」と話しました。
その後、都市計画「糸島メタバースと、極楽浄土と、ランドスケープと。」というテーマの公開授業に、我々インフォシティグループの高野雅晴氏が出演。インフォシティグループでは、糸島サイエンス・ヴィレッジの実現に向けて、ローカル5Gやメタバースを実装していく取り組みを行っています。この公開授業では、東京工業大学教授・柳瀬博一氏が地形から糸島を語り、糸島市役所・中村勇喜氏が糸島サイエンス・ヴィレッジの構想について語りました。その中で高野氏は「糸島プロジェクトに関わっている人それぞれに、糸島をどのような街にしていきたいのかという構想がある。しかし、自分にとって“本当の糸島は何なのか”というものがまだ見つかっていない。それを探していきたい。」と話しました。
そしてラストとなる第4部は、アーティストステージ2。音楽家・Ittiのサウンドと書道アーティスト・Junpei Hagiharaによる書道アートを、映像作家・strings VYが全天球空間映像にミックスするリアルタイムARパフォーマンスが披露されました。
このライブパフォーマンスに取り入れられたのが、日清紡が導入した新たなメディアツール「With yell」。With yellとは、アーティストと一緒にライブを盛り上げられる応援サービスで、会場内でQRコードを読み取り、専用サイトからエールを送付すると、バックモニターに演出が展開されるという仕組み。送ったエールはライブ演出の一部となり、アーティストと一緒にライブ空間を創り上げることができます。今回、会場に集まった人たちも参加し、アーティストと観客が一体となって楽しめる新しいライブステージとなりました。
こうして時間いっぱい、全てのプログラムが終了。
第1弾の時よりも多くの方が集まり、AIやVR、メタバースのさらなる可能性が感じられるイベントとなりました。そしてDevcafe取材班が感じたのは、みんなが何よりも楽しんでやっているということ。平野氏がアカデミーキャンプの子どもたちについて「みんなやりたくてやっている」と語っていましたが、全てのクリエイティブはその気持ちから生まれるのではないでしょうか。「楽しいことをやりたい」という気持ちのその先に、「DX Yourself」の実現がある。今回集まった仲間たちとともに、インフォシティグループとしても今後、新たな挑戦を続けていきます!