CEATEC 2025「5G/6GスペシャルデーⅡ」レポート
2025年10月14日から17日の4日間、日本最大級のデジタルイノベーション総合展「CEATEC 2025」が幕張メッセで開催されました。「Innovation for All(すべての人のためのイノベーション)」をテーマに、800を超える企業や団体が出展。最新テクノロジーと未来の社会像が一堂に会し、まさに技術の祭典となりました。


その中で、XGモバイル推進フォーラム(XGMF)が主催する特別企画「5G/6GスペシャルデーⅡ」が開催され、多くの専門家やビジネスパーソンの関心を集めました。モバイル通信技術の進化と、それがもたらすビジネスの未来像を探るこの企画は、熱気に包まれていました。
【Day1】ローカル5Gは「使える」フェーズへ!
今回は、ローカル5Gの実用事例が次々と紹介された開催初日のセッション【5G/ローカル5Gの進化と展望】セッション2「5G/ローカル5Gによる産業DXの推進」の模様を詳しくレポートします。
「ローカル5Gは使える!」モデレーターが力強く宣言

セッション冒頭、モデレーターを務めるXGMF ODAIBA IX Core プロジェクト共同リーダーであり、株式会社NTTドコモ CSOの中村 武宏氏が登壇しました。
「ローカル5Gはまだ使われていない、高い、複雑、PoC(概念実証)止まり、といった声を聞くが、今日のセッションでその認識を180度変えたい。ローカル5Gはここまで来ている、使えるんだ、ということを理解していただきたい!」
中村氏の力強い宣言は、会場の期待感を一気に高めました。

その後のセッションでは、13名もの登壇者が一人わずか5〜6分という短い時間で、それぞれの現場におけるローカル5Gのリアルな導入事例と最新動向を次々と発表。まさにローカル5Gの“今”を凝縮した、濃密な時間が始まりました。
1. 実装が進むローカル5G
増山 大史 氏
NTT東日本株式会社
無線&IoTビジネス部 5G/IoT企画担当 担当部長
トップバッターとして、労働人口減少や技術継承といった産業現場の課題に対し、ローカル5Gがいかに有効かを解説。広域無線、遠隔指導、遠隔操作、自動運転管理、セキュリティという5つのユースケース分類を紹介し、現場DX推進への貢献度をアピールしました。
2. 未来のダム建設現場を支えるローカル5G
坂本 浩志 氏
KDDIエンジニアリング株式会社
新規事業本部 新規事業推進部 ネットワークソリューション推進G グループリーダー
岐阜県の新丸山ダム建設現場という広大かつ複雑な地形でのローカル5Gネットワーク構築事例を紹介。多数の基地局建設実績と高品質なネットワーク技術を活かし、重機の自動・自律運転を支える安定した通信環境を実現したと語りました。
3. 省人化に挑むーローカル5Gが拓く建設DX
西 彰一 氏
株式会社大林組
土木本部 生産技術本部 企画部 部長
KDDIエンジニアリング社と連携し、新丸山ダムの現場で実現した「自動化施工システム」について発表。掘削から運搬、敷きならし、締め固めに至る一連の作業を10台の建設機械が自動で行う様子を紹介し、約50名で行っていた作業の省人化に成功した実績を強調しました。
4. NSSOLのスマートファクトリーの取り組み紹介とローカル5Gの導入事例
飯田 雅之 氏
日鉄ソリューションズ株式会社
産業ソリューション事業本部 コネクテッド・インダストリー事業推進センター エンジニアリング部 部長
製鉄所や発電所、港湾施設など、幅広い産業分野でのローカル5G導入実績を紹介。それぞれの現場が抱える通信課題に対し、高速大容量・低遅延という5Gの特性を活かしたソリューションを提供し、スマートファクトリー化や業務効率化に貢献している事例を次々と示しました。
5. 九州電力におけるローカル5Gネットワークのご紹介 ~発電所のスマート保安(DX)の実現~
渡辺 誠 氏
九州電力株式会社
情報通信本部 通信ソリューショングループ
火力発電所における「スマート保安」実現に向けた取り組みとして、屋外にローカル5G、屋内にWi-Fiを敷設したハイブリッドな無線ネットワークを紹介。全社員に配布されているiPhoneを直接ローカル5Gに接続可能にしたことで、現場作業の効率化と迅速な情報共有を実現しました。
6. ローカル5G網を活用した自律走行ロボット等によるスマート保安実現に向けた取組み
河野 英士 氏
広島ガス株式会社
経営企画部 イノベーション推進室 課長代理
自律走行ロボットがLNG基地内を巡回し、ガス漏洩検知や設備点検を行うシステムを紹介。ローカル5GとWi-Fiを組み合わせることで、広大な基地内の安定した通信を確保し、24時間体制での遠隔監視を実現。危険区域での作業の無人化と安全性向上に大きく貢献していると述べました。
7. ローカル5Gの広がりを支える ― 商用化に向けた進化系アプローチ
金納 佑樹 氏
NTTドコモビジネス株式会社
プラットフォームサービス本部5G&IoTサービス部 第一サービス部門7G 担当課長
ローカル5Gの導入ハードルを大きく下げる新サービス「ローカル5G TypeD」を発表。NTTドコモのキャリア品質の設備や全国規模の保守体制をシェアすることで、低コストながら高い信頼性を実現。これにより、より多くの企業がローカル5Gの恩恵を受けられるように。
8. 首都高速の次世代通信基盤:ローカル5Gによる通信強靭化と現場DX
小山 俊泰 氏
首都高速道路株式会社
技術部 施設技術課 係長
災害時の緊急輸送路確保という重要な使命を持つ首都高速道路において、強靭な通信インフラとしてのローカル5G導入計画を発表。平常時の効率的なメンテナンスだけでなく、有事の際にも確実に機能する通信網を構築することの重要性を訴えました。
9. 地下鉄フィールドにおける5G/L5Gを用いた鉄道業務用アプリケーションの情報伝送試験
中村 一城 氏
公益財団法人鉄道総合技術研究所
情報通信技術研究部 通信ネットワーク 室長
公衆5Gが届きにくい地下鉄環境において、ローカル5Gと公衆5Gを組み合わせたハイブリッド通信の実証実験結果を報告。列車制御やメンテナンスデータ伝送など、複数のアプリケーションを安定して運用できることを確認し、鉄道業務の高度化への道筋を示しました。
10. ローカル5Gの利活用~地域交通への期待~
中村 光則 氏
地域BWA推進協議会
BWA推進部会長
秋田県で実施されている自動運転バスの運行支援事例を紹介。地域BWA(Broadband Wireless Access)事業者が主体となり、ローカル5Gを活用して遠隔監視や安全確保を行うことで、地域の交通課題解決に貢献できると発表。地域密着型の通信事業者が果たす役割の大きさを強調しました。
11. 海外のプライベート5G市場の動向と最新事例紹介
生田目 瑛子 氏
ノキアソリューションズ&ネットワーク合同会社
クラウド&ネットワークサービス事業部 エンタプライズキャンパスエッジソリューションビジネスセンター 事業開発マネージャー
世界ではすでに920社以上がプライベートワイヤレスを導入しているというグローバル市場の動向を解説。特に製造業、公共部門、エネルギー分野での導入が進んでおり、各国の周波数割り当て状況の違いにも触れ、日本のローカル5Gが世界的に見ても先進的な取り組みであることを示唆しました。
12. 5G/ローカル5Gが拓く産業DXの新世界:端末進化で広がる活用術
劔持 亨 氏
京セラみらいエンビジョン株式会社
営業統括部 副事業部長
ローカル5Gの能力を最大限に引き出すためには、用途に応じた端末が不可欠であると強調。映像伝送装置、堅牢なタブレットやスマートフォン、小型ルーターなど、過酷な産業現場のニーズに応える多様なデバイスを紹介し、端末の進化が活用の幅をさらに広げることを示しました。
13. 産学連携でユーザと共に創るLocal 5G社会実装
竹澤 寛 氏
東京大学 工学系研究科
中尾研究室 特任専門職員
ユーザー自身が主体となってネットワークを構築・活用できる未来を目指し、小型・高性能な一体型基地局「ハイパーノヴァ」の開発について発表。産学連携によるオープンな技術開発を通じて、誰もが5Gの恩恵を受けられる社会の実現に向けた研究の最前線を報告しました。

ローカル5Gは、今や“現実”の選択肢
息つく暇もないほどの濃密な発表の数々では、ダム、工場のライン、都市のインフラ、そして未来の社会まで、あらゆる事例が怒涛のように紹介されました。ローカル5Gがもたらす変革の波は、想像を超えるスケールで、すでに現実のものとなっています。
セッション開始前にはローカル5Gに漠然と感じていたハードルが、いつしか「自分たちの業界ならどう使えるだろう?」という期待へと変わっていました。このセッションは、ローカル5Gがすでに現実的な技術の選択肢の一つであり、これからの産業DXを生き抜くための“必須ツール”でもあることを、力強く証明してくれたように感じます。
この「5G/6GスペシャルデーⅡ」では、他にも多様なセッションが開催されており、2日目のセッションでは、さらに未来を見据えた「6G」の世界が語られています。
多様なセッションが開催されており、2日目のセッションでは、さらに未来を見据えた「6G」の世界が語られています。
【Day2】5G高度化、6G最新状況と展望
セッション5:6G & AI

Day2のセッション5では産学の専門家が集まり、「6G & AI」をテーマに、6Gの設計・最適化におけるAIの活用、ネットワークの自律制御、サービスの高度化に向けた最新研究動向が紹介されました。
まさに未来の通信と知能がどのように融合していくのか、その最前線が語られています。
● ソフトバンクのAIインフラ戦略
湧川 隆次 氏
ソフトバンク株式会社
執行役員 先端技術研究所 所長
ソフトバンクのAIインフラ戦略を紹介。6G時代を見据え、AI処理能力を持つ基地局「AI-RAN」や通信分野に特化した大規模言語モデル(LLM)の開発など、AIを社会インフラとして活用するための野心的な取り組みを明らかにしました。
● AI nativeな6Gネットワークの実現に向けて
磯部 慎一 氏
NTTドコモ 6Gテック部 担当部長
「AIネイティブな6Gネットワーク」の実現に向けたビジョンを発表。ネットワーク運用やサービス提供にAIを深く組み込むことで、より効率的でパーソナライズされた通信体験を目指す考えを示しました。
● Beyond 5GにおけるOpenRAN無線通信技術の研究開発について
朽津 光広 氏
楽天モバイル株式会社
イノベーションプログラム開発事業部 ジェネラルマネージャー
Beyond 5G/6GにおけるOpenRANとAIの連携について解説。完全に仮想化されたネットワーク上でAIを活用し、柔軟かつ効率的な運用や新たなサービス創出を目指す取り組みを紹介しました。
● B5G/6Gを支えるAI革新とKDDIの挑戦
山本 俊明 氏
株式会社KDDI総合研究所 無線部門長
「6Gを支えるAI革新」と題し、ネットワークの最適化や予兆保全、さらには新たなユーザー体験創出まで、AIが6Gにもたらす多岐にわたる可能性について、具体的な研究開発事例を交えて語りました。
● AI ネイティブ 6G に向けたエヌビディアの展望
野田 真 氏
エヌビディア合同会社テレコムビジネスユニット
AIと通信の融合における半導体技術の重要性を強調。6G時代の膨大なデータ処理を可能にするGPU技術や、AI-RANを実現するためのプラットフォーム「NVIDIA Aerial」などを紹介しました。
● 通信とAIの融合が創る次世代サイバーインフラ
中尾 彰宏 氏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
通信とAIの融合がもたらす次世代サイバーインフラの未来像を提示。アカデミアの視点から、技術的な課題だけでなく、社会実装に向けた制度設計や人材育成の重要性についても言及しました。
AIがネットワーク自体を進化させ、ネットワークがAIの能力を最大限に引き出す。そんな相互作用によって、私たちの社会や生活が根底から変わっていく未来を予感させるセッションでした。
セッション6:6G strategy session

「5G/6GスペシャルデーII Day2」の最後を飾るセッション6では、このイベントを主催するXGモバイル推進フォーラム(XGMF)が進める6G関連プロジェクトの全貌が、各プロジェクトリーダーから直接語られました。
6G全体のビジョン策定から、無線技術、ネットワークアーキテクチャ、さらにはテラヘルツ波やNTN(非地上系ネットワーク)といった個別技術、そして6G時代の高度な連携サービスに不可欠となる高精度な時刻・空間同期技術について解説まで、多岐にわたる研究開発の進捗状況が共有されました。
まさにオールジャパン体制で6G時代に向けた技術開発と標準化をリードしていこうという、日本の強い意志が感じられる内容でした。
6Gが拓く産業創出への期待

「5G/6GスペシャルデーII」を通じて、5G/ローカル5Gの実用化が急速に進んでいる現状と、さらにその先の6G時代に向けた日本の活発な研究開発動向が紹介されました。AIとの融合により、通信は単なる情報の伝伝達手段を超え、社会全体の知能を高める基盤へと進化しています。
6Gの標準化や開発において日本が世界をリードし、これらの技術が社会課題の解決や新たな産業創出に繋がっていく未来に、大きな期待を抱かずにはいられません。