「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」
視察記 vol.1
福岡で加速する5Gイノベーション
東京都が実施する「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosteres Project)」および「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」において、福岡県にて実証・実装事例地視察(2025年11月)が実施されました。
→「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業/Tokyo NEXT 5G Boosters Project」
本視察の目的は以下の通りです。
● 卒業プロモーターの実証・実装事例地への視察会企画・実施による、現役の開発プロモーターに対する好事例のポイントやノウハウの共有及びプロモーター間でのリレーションの醸成。
● 国家戦略特区として指定され、スタートアップ支援に向けた環境整備に関して全国的にも注目されている、福岡市でのSU支援拠点施設の取組を理解・把握。
令和7年度より開発プロモーターとして採択されたインフォシティグループも参加し、同行したDevcafe取材班から、その模様をレポートします!
今回はその第一弾として、視察初日に訪れた福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(以下、FGN)」での知見と、視察の模様を中心にご報告します。
スタートアップの集積地「Fukuoka Growth Next (FGN)」を訪問
福岡市中央区大名にあるFGNは、閉校となった旧大名小学校の校舎をリノベーションして活用されています。
かつての学び舎が、現在は新たなビジネスと挑戦を生み出すインキュベーション施設へと生まれ変わっている点にユニークさを感じずにはいられません。
ここでは、福岡市およびFGN運営事務局の皆様より、福岡市におけるスタートアップ支援の戦略と現状についてご説明いただきました。


なぜ福岡が「スタートアップ都市」を目指したのか
福岡市がスタートアップ支援に注力し始めた背景には、米国シアトルの存在がありました。
シアトルはAmazonやMicrosoftなど世界的な企業を輩出している都市ですが、人口規模や「イノベーションと自然が近接するコンパクトシティ」である点など、福岡市との共通項が多く見出されたのです。
「福岡からも世界を変えるユニコーン企業を創出する」。
このビジョンのもと、2014年に「スタートアップ都市ふくおか」を宣言し、国家戦略特区の指定を受けるなど、国を挙げた支援体制をいち早く構築してきました。
官民一体で支えるエコシステム
FGNの強みは、「官民一体」となった包括的な支援体制にあります。
起業相談の窓口となる「スタ―トアップカフェ」の併設に加え、コワーキングスペース、投資家や大企業とのマッチング機能など、スタートアップの成長フェーズに必要な機能が集約されています。
特に注目すべきポイントは以下の通りです。
● シームレスな支援:アイデア段階の「創業期」から、事業拡大を目指す「成長期」まで、各ステージに対応した支援プログラムが一気通貫で用意されています。
● バックオフィス支援の充実:スタートアップが本業である事業開発に集中できるよう、経理や人事労務などのバックオフィス業務を専門家がサポートする仕組みが整えられています。
● コミュニティの醸成:施設内にはコワーキングスペースやシェアオフィスだけでなく、起業家や支援者が交流できる「awabar」のようなコミュニティスペースも併設されており、偶発的な出会いや議論が生まれる「場」として機能しています。
現在、FGNは第3期を迎えており、そのミッションもアップデートされています。
新たな目標は「2029年までに、福岡を代表する時価総額100億円規模のスタートアップを10社創出する」こと。
裾野を広げるフェーズから、世界で戦える「質」と「規模」を追求するフェーズへと進化していることが伺えました。


ワークスペースが設けられている
「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」にとっての示唆
今回の視察に参加した「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」のメンバーにとっても、FGNの視察は有意義なものとなったようです。

東京は巨大なマーケットを有していますが、福岡のような「行政と民間、市民の距離が近いコンパクトなエコシステム」からは、学ぶべき点が多くあります。
特に5GやIoTといった通信技術は、実際の都市空間でどのように実装されるかが鍵となります。福岡市の柔軟な行政連携やオープンな風土は、東京のスタートアップが技術を社会実装していく上で、大きなヒントになったことでしょう。
次回予告:舞台は「糸島」へ。SVIの挑戦
FGNでの濃密なインプットを終えた一行は、翌日、福岡市の西隣に位置する糸島市へと向かいます。
そこには、九州大学と連携し、ゼロから「学術研究都市」を構築しようとする「糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)」の壮大な計画が進んでいました。
次回の記事では、SVIの取り組みを中心に、Day2の視察レポートをお届けします。
実はこのSVIの推進には、Devcafeでもおなじみの株式会社ビットメディア(Tokyo NEXT 5G Boosters Projectの構成員でもあります)の高野も、一般社団法人SVI推進協議会の一員として深く関わっています。
豊かな自然の中で最先端技術の実装を目指す「糸島モデル」。そして、5G技術が地方創生とどのように融合していくのか。
次回のレポートもぜひご期待ください。