【ワイヤレスジャパン×WTP 2026】
最大規模ブースのXGMFで見える6G時代
前回記事「ワイヤレスジャパン×WTP 2026」の全体レポートから、今回は会場内で最大規模の面積を誇っていた「XGMF(XGモバイル推進フォーラム)」のブースにクローズアップします。
XGMFは、5Gの普及とBeyond 5G(6G)の研究開発を推進するフォーラムです。
今回のブースでは、10社を超える企業・団体・研究室が結集し、商用化が迫るローカル5G製品から、6G時代を見据えたデジタルツイン、未開拓周波数の技術まで、「無線通信の最前線」を体感できる展示が行われました。
1. ローカル5Gとミリ波活用の「現実解」を提示する出展社
まずは、今すぐにでもビジネスの現場で活用できる、あるいは商用化を間近に控えた製品やソリューションを展示していた企業・団体です。


東京大学 中尾研究室
NECネッツエスアイとの産学連携によりローカル5G基地局「HYPERNOVA」を商用展開する同研究室は、次世代機のプロトタイプを展示。最大送信電力6Wで広範囲をカバーする「高出力版」と、PoE対応および小型・軽量化で設置を容易にした最大2Wの「低出力版(低消費電力モデル)」を披露 。また、NTT・NECとの3者共同で「6GとIOWNプラットフォーム技術の統合によるAIエージェントの通信・計算効率向上」に向けた研究成果を展示しました。
富士ソフト株式会社
国内ではまだ希少なローカル5G対応FWA端末などを豊富にラインナップ。台湾Pegatron製の長距離アップリンクを実現するミリ波対応FWA用CPE「M2U300」(HPUE対応)や、軽量版5G「RedCap」に対応した動体検知機能付きの4Kカメラ「Muscat」を展示。さらに自社ブランドのeSIM対応5Gモバイルルーター「FS050W」も並びました。


住友電気工業株式会社
「ローカル5G/プライベート5G ミリ波対応 分散アンテナシステム(DAS)」を展示し、直進性が強く障害物に弱いミリ波のカバーエリアを広げるソリューションを示しました。そして「ミリ波×モノポールアンテナの実力」と題して、工場などの屋内環境における電波の放射パターンや、人体による遮蔽(ボディブロッキング)、フェージングへの対策を解説しました。
NEC
今年度上期に国内提供を開始する新型5G基地局無線機を展示。また、NTT・NTTドコモとの共同実験の成果として「複数車両で途切れない通信を実証!ミリ波を活用した高速移動車両向け大容量通信技術」を出展しました。これは、6G時代における自動運転車や次世代高速鉄道内で乗客に対して、ミリ波による安定した大容量通信を提供する技術です。
「バズワードからの脱却と、ミリ波普及への高い壁への挑戦」
日本国内におけるローカル5Gは、「導入コストに見合う具体的な課題解決ができるか」が厳しく問われる現場実装フェーズに入っています。また、国内普及の壁となっている「ミリ波帯」についても、HPUE対応CPEやDAS、そして高速移動体向けのハンドオーバー技術などにより、通信エリアの制約を物理的・技術的にこじ開けようとする業界の強い意志が感じられました。
2. 6G・AI-RANを見据えたシミュレーションとデジタルツイン
続いて、次世代の無線通信インフラの基盤となる、6Gに向けた高度な技術・測定環境の展示を行った出展社です。


アンリツ株式会社
「6Gに向けた屋内電波伝搬シミュレーションの高精度化」を出展 。株式会社NTTドコモとの共同検証成果として、伝搬データの効率的な自動測定システムや、それを下支えする「Universal RF Unit MD8190A」を公開しました。また、電波収録やFR3/RedCap評価など、次世代無線の検証を支える多彩な測定ソリューションを紹介しました。
株式会社NTTドコモ / NTT株式会社 / キーサイト・テクノロジー株式会社
3社共同で「6G時代におけるネットワークデジタルツインの実現により、電波を“見える化”し通信を“最適化”する」をテーマに展示を展開。共同実験の成果として「電波伝搬データのシミュレーション技術」と「ミリ波分散MIMOのための置局設計技術」を披露しました。


ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社
「NTNから6Gまで、次世代無線通信のエキスパート」として包括的なソリューションを紹介。地上スマートフォンと直接通信するDTC(Direct-To-Cell)まで含むすべてのセルラーNTN技術に対応し、マルチバンド、マルチオービットをフルカバーするNTN評価ソリューションを公開しました。
VIAVIソリューションズ株式会社
ミッドバンドおよび6Gのエンドツーエンド試験を可能にする「Advanced RF Front-End with E500 for Mid-band/6G End-to-End Testing」を出展しました。NVIDIAのプラットフォームと連携し、マップ上で「想定空間の5G電波伝搬特性をリアルタイム予測中」とする高度なシミュレーションデモを公開。
「デジタルツインによる『電波の見える化』と、AI・ワンボックス化による検証の超効率化」
6Gに向けた国内の測定・検証の現場では、「実測データのデジタルツインへの精緻な取り込み」と「AI連携によるリアルタイム予測・評価の高速化」が最重要テーマとなっています。
アンリツの自動測定ロボットや、ドコモ・NTT・キーサイトの「ミリ波分散MIMO置局設計技術」が仮想世界への正確な電波の落とし込みを狙う一方、VIAVIソリューションズが提示したNVIDIAプラットフォーム連携による「電波伝搬特性のリアルタイム予測」は、AIによる計算処理の高速化が検証フェーズに劇的な変革をもたらす可能性を示しています。また、ローデ・シュワルツの「CMX500」に見られるように、複雑極まるNTN技術を「ワンボックス」で効率的に試験できる環境の整備は、日本の6Gロードマップを加速させる極めて重要な足掛かりとなっています。
3. 未開拓領域への挑戦と次世代モビリティ通信
最後に、テラヘルツ波などの未開拓周波数や、高速移動体向け通信など、6Gのさらに先を行くビジョンを示した出展社です。


クアルコムジャパン合同会社
「TIMELINE TO 6G」や「AI-driven transformation of the 6G system」といった説明を展開。6Gにおける周波数効率や容量、カバレッジの向上ロードマップに加え、Agentic AI/UXサービス、物理AI(Physical AI)、デジタルツインプラットフォームなどの「6Gセンシング&コンピュートサービス」との統合ビジョンを包括的に発信しました。
ローム株式会社
共鳴トンネルダイオード素子を用いた最先端半導体「テラヘルツ波発振デバイス・検出デバイス」を出展。動作周波数320GHz(Typ)、出力〜 -10dBmを達成しつつ、一般的な通信器の1/1,000となる約10mWの超低消費電力化と超小型パッケージ(4.0mm×4.3mm×3.25mm)を実現しています。


ビームウェイブ(BeammWave)
FR2(ミリ波帯)における複雑な無線シナリオに対応する「Digital Beamforming in FR2」。測定用プラットフォーム「ADP1」をレシーバーとして使用し、信号ストリームをベースバンドプロセッサで最適結合するデジタルビームフォーミング・アクセラレータ(DBFA)技術の測定パフォーマンスを公開しました。
東海旅客鉄道(JR東海) / 西日本旅客鉄道(JR西日本) / 国際電気 / NTTドコモ / JMCIA
5社・団体共同で「高速鉄道における快適な通信環境の実現に向けた研究開発」を出展。電波が遮蔽されやすい新幹線車内の通信品質を改善するため、「500km/h対応の無線バックホール」と「車上携帯電話基地局」を連携させる移動体向けのネットワーク構成を提示しました。
「日本の環境が生んだ難易度の高い技術課題」
新幹線やリニア中央新幹線のような時速300km〜500km級の超高速移動環境で、1,000台規模の端末に安定した大容量通信を提供する要求は、日本の地理的・社会的環境が生んだ極めて難度の高い技術課題です。キャリアと鉄道インフラ企業が共同でこの課題に挑む姿は日本の技術力を象徴しています。同時に、ロームやクアルコム、ビームウェイブが競うテラヘルツ波やデジタルビームフォーミング(DBFA)の技術は、6Gのパラダイムシフトを物理層(ハードウェア・デバイス)から支えるための極めて重要な主戦場となっています。

XGMFブースは、ミリ波の実装、デジタルツインによる可視化、そして未開拓領域への挑戦といった、6Gを形作る要素技術がパズルのように組み合わさっていく過程を目の当たりにできる空間でした。
産学官が連携し、国内特有の課題(人口減少、災害対策、既存システムとの調整)に立ち向かいながら次世代インフラの構築を目指す姿勢からは、日本の通信業界の強い熱量を感じることができました。