ワイヤレスジャパン 基調講演
「6G最前線:AIと周波数が切り拓く次世代ネットワーク」後半
世界で激化する6Gに向けた周波数確保

2026/06/08
ワイヤレスジャパン 基調講演「6G最前線:AIと周波数が切り拓く次世代ネットワーク」後半 世界で激化する6Gに向けた周波数確保

前回お届けした基調講演の前半「6G-AIセッション」に続き、今回は後半部分にあたる「6G-周波数セッション」の模様をレポートします。

6Gの導入は「家づくり」に例えれば、その基盤となる「土地」、すなわち「周波数」の確保が不可欠です。本講演では、2027年の世界無線通信会議(WRC-27)に向けたグローバルな周波数獲得競争の現状と、国内の既存システムとの共存という現実的な課題について、各国のキーパーソンから客観的かつシビアな見解を聞くことができました。

● 中村 武宏 氏(株式会社NTTドコモ CSO / XGMF 6G推進プロジェクトリーダー / 本セッション モデレーター)

● 五十嵐 大和 氏(総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長)

● ジョン・クージン 氏(クアルコム シニアバイスプレジデント 周波数政策・レギュレーション対応)

● ホーカン・オロフソン 氏(エリクソン アジア太平洋地域 CTOオフィス 先端技術担当ディレクター)

● ウルリッヒ・ドロップマン 氏(ノキア Standardization and Industry Environment 部門責任者) ※オンライン登壇

● 新 博行 氏(株式会社NTTドコモ 電波企画室 専任部長 / ITU-R WP 5D議長 ) ※オンライン登壇

● 本多 美雄 氏(エリクソン・ジャパン株式会社 技術本部 標準化・レギュレーション担当部長 / XGMF 周波数ワーキングリーダー) ※オンライン登壇

6Gに向けた周波数確保の国際動向

中村 武宏 氏(株式会社NTTドコモ CSO / XGMF 6G推進プロジェクトリーダー / 本セッション モデレーター)

セッションの冒頭、モデレーターを務める中村氏より、本セッションの趣旨と背景が語られました。中村氏は、6GにおいてAIと並ぶもう一つの最重要トピックが「周波数」であり、現在世界中で6G向け周波数の選定やグローバルハーモナイゼーション(国際調和)に関する議論が活発化している状況だと説明します。
また、本展示会と同週にジュネーブでITUの無線通信部門における作業部会「WP 5D」が開催中であるというタイミングのなか、国内外のキーパーソンが本セッションに集結した意義を強調。日本および世界と協調して6Gの機運を高めていくことの重要性が示され、各講演へと繋がりました。

五十嵐 大和 氏(総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長)
ジョン・クージン 氏(クアルコム シニアバイスプレジデント 周波数政策・レギュレーション対応)

クアルコムのジョン・クージン 氏は、6Gのモバイルデータ需要を満たすためには、最大400MHz幅の広帯域なチャネルが必要になると提唱しました。米国では、大統領覚書に基づき、下側の7GHz帯や2.7GHz帯の商用利用に向けた検討が急速に進められています。

ホーカン・オロフソン 氏(エリクソン アジア太平洋地域 CTOオフィス 先端技術担当ディレクター)

プレ商用システムが2028年、商用システムが2030年に登場するというタイムラインの中で、周波数確保に残された時間は少ないと、エリクソンのホーカン・オロフソン 氏が警鐘を鳴らします。特にアッパー6GHz帯は、世界人口の大部分を占める地域で支持されており、エコシステム構築のために重要であることが強調されました。

ウルリッヒ・ドロップマン 氏(ノキア Standardization and Industry Environment 部門 責任者) ※オンライン登壇

ノキアのウルリッヒ・ドロップマン 氏からは、欧州等ではアッパー6GHz帯のモバイル割り当てに向けたモメンタムが非常に強いことが紹介されました。一方、14.8〜15.35GHz帯などのより高い周波数帯については、カバレッジの観点などから技術的な課題(チャレンジングな領域)が残されています。

新 博行 氏(株式会社NTTドコモ 電波企画室 専任部長 / ITU-R WP 5D議長)※オンライン登壇

ITU-Rでは2030年までのIMT-2030(6G)勧告完成に向けた作業が進んでおり、AI要件やセンシング要件などが新たに盛り込まれていると、ITU-R WP 5D議長であるNTTドコモ 新 氏より説明されました。WRC-27に向けては、IMT周波数の追加と既存業務の保護という2つのバランスを取るための技術的検討が現在進行中であることが報告されています。

本多 美雄 氏(エリクソン・ジャパン株式会社 技術本部 標準化・レギュレーション担当部長 / XGMF 周波数ワーキングリーダー )※オンライン登壇

XGMF 周波数ワーキングリーダー 本多 氏は、XGMFが発行した周波数白書に基づき、6Gでは200〜400MHz程度のシステム帯域幅が必要であり、容量とカバレッジのバランスに優れたミッドバンド(アッパー6GHz帯や7〜8GHz帯など)の確保が必須であると提言しました。日本としてもグローバル調和を牽引していくべきと話します。

パネルディスカッション:実用化に向けたシビアな論点

後半のパネルディスカッションでは、モデレーターの中村氏を中心に、専門的かつ実践的な議論が展開されました。

● クアルコム: 複数の狭い帯域を束ねるよりも、連続した広い帯域を確保する方が、機器の電力効率やネットワークの運用効率において極めて重要であると指摘。

● ノキア / エリクソン: 国境や地域の事情により難易度は異なるものの、技術的な設計目標として連続帯域の確保を目指しており、一部の国では実現可能(現実的)との見方を語りました。

● 海外ベンダー陣: WRC-27の議題となっている7.125〜8.4GHz帯の検討も重要である一方、すでに多くの地域で検討が進んでいるアッパー6GHz帯の方が、初期の6G展開において時間的に先行する重要な帯域になるという認識で一致しました。

● 総務省: 国際調和は、機器の低廉化や産業競争力に直結するため極めて重要であると明言しました。一方で、既存システムとの共用・移行にあたっては、技術的・経済的な合理性や、国民全体の利益(納得感)を総合的に判断する必要があるという、規制当局としての難しい舵取りのスタンスを説明しました。

● XGMF / ITU-R: 業界側からの要望として、研究開発や国際標準化をリードするためには、どの周波数を、いつ、どれだけの幅で確保するのかという「中長期的な周波数方針」を、早い段階で明確に提示してほしいという強い要望が総務省へ寄せられました。

今回の「6G-周波数セッション」を通じて、6Gの社会実装に向けた最大の障壁が「技術」だけでなく「周波数の確保と国際的なコンセンサス形成」にあることが明確になりました。

日本が6G時代においてもリーダーシップを発揮するためには、産学官が一体となり、既存システムの保護と新たな周波数確保のバランスをどう取るかが今後の鍵となります。

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