テレポートで人と人とが楽しく繋がれる未来へ | テレポート株式会社・平野友康さんインタビュー
インフォシティグループは、東京都が行う「5G技術活用型開発等促進事業」の“開発プロモーター”として、スタートアップ企業6社の事業創出を支援します。 この記事では、それぞれがどんな事業に取り組んでいるのか、どんな未来を創造していくのかを発信していきます。
第一回は、スタートアップ企業の1社であるテレポート株式会社・平野友康さんを取材。テレポートでできること、今後実現したい未来などについてお話を伺いました。
平野友康(Tomoyasu Hirano)
1974年生まれ、ハワイ在住。
テレポート株式会社代表、VR宇宙旅行社スターハウス代表、IU情報経営イノベーション専門職大学超客員教授、参加型社会学会理事。1998年に鴻上尚史主宰「劇団第三舞台」を プロデュースするサードステージのデジタル門から独立、株式会社デジタルステージを設立。2015年まで同社代表を務める。「モーションダイブ」シリーズや「BIND」、 「フォトシネマ」など“自分たちの生活をデザインする”ソフトウェアを開発。著書『旅する会社』(アスキー)をはじめ、ニッポン放送「平野友康のオールナイトニッポン」のDJ、 坂本龍一氏のネットライブ中継のプロデュースなど多方面で活躍。グッドデザイン賞金賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など受賞歴多数。
目次
暮らしや働き方を変えたい。そのために何か自分たちでやれることがあるはずだ。
――そもそもテレポートを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
僕、昔から何かを作るのが好きなんですよ。それまでにこの世の中にないもので「これ欲しかった」って思えるものが作れた時にすごく喜びを感じて。 だから、今までさまざまなソフトウェアを作ってきたんですね。
そんな中で最近思っているのが、「暮らしや働き方を変えたい」ということ。“学ぶ・遊ぶ・働く”を変える。それをソフトウェアでできないだろうかと考えたんです。 日常でも仕事でもプロジェクト化できるような“プラットホーム”を作ったら、遊ぶように働くとか、働くように遊ぶとか、そんな未来が実現できるんじゃないかな、と。 そう考えて、まず2年前にお稽古アプリを作ったんです。というのも、コロナの影響で手芸教室やピアノ教室など、いろんな教室ができなくなってしまったので。 それからプロジェクトやコミュニティを作って、管理・運営していくようなプラットホームが作れるんじゃないかと試行錯誤していました。
僕、とにかくそれぞれの人の人生を楽しくしたいんですよね。そのために自分たちでやれること、やるべきことがあるはずだ、と強く信じているところが昔からあって。 そんな思いから開発しているテレポートの目的は、当事者が自分たちの手で、仕事やコミュニティをDX化できるようにすること。自分たちっていうのは僕ら技術者ではなくて、 例えば、村の人がテレポートを使って自分たちの村に必要なことを自分たちでDX化できる。要は、“DXのDIY化”がしたいんです。一言で言うなら「DX Yourself」です。
自分たちで自分たちのものが作れる。それがテレポート。
――テレポートの機能としては、どんなものがあるのでしょうか?
こちらがテレポートの画面ですが、「ゲスト」「メンバー」「クルー」というように3つのモードに分けられています。Webサイトで普通にアクセスしてきた人は「ゲスト」。 そこから登録・フォローすると「メンバー」。そして、スタッフは「クルー」。それぞれの立場によって見ることができる画面が変わってきます。
さまざまなルームを設けていて、こちらは「テレポカフェ」と呼んでいる社員カフェです。音楽をかけながらみんなで気軽に話せる場として活用しています。 「ゲスト」や「メンバー」でも、登録すればこのチャット上でみんなで話ができるんです。社員とゲストが繋がる、そんな感じの場にしても面白いですよね。
あとは、「テレポストア」という購買部もあります。例えば、名刺がほしいという人にはここに書き込んで注文してもらう。お店なので「いらっしゃいませ~」という感じで やりとりしています(笑)。これは社内購買部ですが、これを表のWebに出すとそのままオンラインショップになっちゃうんですよね。ファンの方も買えちゃいます。
――こうしたテレポートを使って、どのようなことができるのですか?
イベントの受付を簡略化できたり、家族内の連絡帳を簡単に作れたり、なんなら学校だって作れると思いますよ。実際の例としては、テレポートの開発リーダーが住んでいる 越谷レイクタウンで年に一回お祭りがあり、そこでテレポートを使ってもらうという計画もあります。地域のお祭りなので、住民同士で話し合わなければならないことがたくさんある。 そんな中、テレポートを使って現状を共有したり、「いよいよ1週間前です」と住民の人にビデオで配信したり、回覧板のようなものを作ったり……。 どんどんその場の思いつきでやっていけるんですよね。チケットをQRで読み込むとクーポンがもらえるとか。「こんなこともできるといいよね」っていうのをビジネスではなく、 住民の人たち、つまり当事者同士で考えて実現できるっていうのが、僕はすごく重要だし、新しいと思うんです。自分たちで自分たちのものを作れる。まさにDIYですよね。 それによってみんなが仲良くなる機会も生まれますから。そのためには簡単にそれが実現できないといけない。だからプログラムを知らなくてもこうした高度なことができる 「ノーコード」を目指しています。大変だと誰もやりたくないですからね(笑)。
人と人が繋がるために一番大事なこと、それは……。
――先日(2021年12月11日に)行われた「MUTEK」も“お祭り”のような雰囲気でした。
「MUTEK」の現場レポートはこちら
今回「MUTEK」をやって「イベントっていいな!」と実感しました。イベントをきっかけに、みんなが仲良くなって距離が縮まる。そして話していくうちに 「次も一緒にイベントやろう」っていう話になるんですよ。もともとテレポート社では、学校でも仕事でも地域でも、人と人とがどうやったら仲良くなれるんだろうって考えていたんです。 その結果、今回分かったことは、「リアルで何かイベントをやる」。そこで出会って次に向けての話ができると、オンライン上でやりとりしても自然だし楽しくなる。 オンラインだけだと結局その人の素性は分からない。だからリアルを交えてのオンライン活用というのが大事だと思いますね。
――人と人が繋がるために一番大事なことは「リアルで会う」ということでしょうか?
「“リアルで何かをする”ということに向かっていく」ということですね。みんなでワイワイやっていると完全に文化祭みたいな感じなので。 一緒に何かを作り上げていく中で、どんどん仲良くなっていく。もう青春ですよね。僕なんて以前、仲良くなった結果、2時間くらい大ゲンカしたことありますから(笑)。 オンラインでケンカはなかなかできないですからね。いろんな現実に起こる小さな出来事を乗り越えることで人は成長して、仲良くなっていくわけですから。
楽しい人間関係はテレポートで作れる。
――テレポートで実現したい未来はどんなものですか?
テレポートでやりたいことは、「安心して楽しい人間関係を作る」ということ。僕は、今の仕事や学校のあり方が嫌なんです。白々しいミーティングとか多すぎるルールとか。 仲良く遊べる人が一緒にいることが何よりも幸せだと思うんです。でも、友達って簡単にできるものではないですよね。やっぱり人はリアルなイベントを通じてしか仲良くなれないと思うので、 それが実現しやすいようにしたい。そのためにテクノロジーを使おうっていうことです。テレポートがあればバザーができる、イベントができる、リアルに仲良くなれる。 自分たちの生活とか身近なところにテクノロジーを取り入れて、例えば行きたくない会社に行くとか、そういう“しなければならないこと”を壊していくのって面白いと思うんですよ。 それがテレポートでやりたいことですね。
“なんとなく始まりそう”なワクワクする未来へ。
――最後に、平野さんが今後やりたいと考えていることはありますか?
最近だと「MUTEK」で行ったバーチャル空間での音楽ライブを、次は宇宙空間をつくってその中でできないかという話で盛り上がっています。 天文学者の友達数名に即興で話してもらって、それに合わせて映像を出したり、VRの世界にその人たちを合成したり、参加している人たちも気軽に質問できたり……。 とにかくシナリオがない“即興宇宙トーク&音楽ショー”のようなものをプラネタリウムやドームシアターでやりたいねって話しています。今はひたすらアイデアを出している最中ですね。
あとは、温泉宿に天文台を作るというプロジェクトもあります。この間、その天文台を誘致してくれる温泉宿を募集したら、もう数件の「うちにつくっていいよ」っていう オファーが来たらしいです。行きつけの温泉宿ができて天体観測ができたら最高ですよね。そこで先程の宇宙トークショーもできますし。 こんなふうに、一つのひらめきから“なんとなく始まりそう”くらいの感じで始められる。そして繋がれる。 自分たちが必要としているコミュニケーションツールを自分たちの手でつくれるから、毎日のように使いやすくなるまでちょこちょこ改善・改良ができる。 DXを自分たちの手でやれる環境が用意されている。それがテレポートの魅力だと思います。