「5GMF×Tokyo 5G Boosters Project令和3年度採択開発プロモーター インフォシティグループ コラボイベント」レポート

2023/03/30
「5GMF×Tokyo 5G Boosters Project令和3年度採択開発プロモーター インフォシティグループ コラボイベント」レポート

3月15日(水)、5GMFアプリケーション委員会とTokyo 5G Boosters Project 令和3年度採択開発プロモーターのインフォシティグループが、オンラインにてコラボイベントを開催しました。テーマは、「5G/ローカル5Gが育むまちづくり&エンターテイメントの未来」。このイベントに、支援先スタートアップである株式会社FLARE SYSTEMSと株式会社stuが参加しました。

イベント前の3月2日(木)、FLARE SYSTEMSは、stuのスタジオにローカル5Gソフトウェア基地局を設置。これにより5Gの電波を出すことができ、ワイヤレスでさまざまな実験が可能になります。当日はこの基地局を使い、stuのスタジオで撮影・配信を実施。このイベント自体が、ホールスタジオ実証という形になりました。

イベントの司会進行を務めたのは、株式会社ビットメディアの高野雅晴氏。

まず、株式会社インフォシティの岩浪剛太氏が開会のあいさつを行いました。
「本日はstuさんのかっこいいスタジオで、FLARE SYSTEMSさんのローカル5G基地局を使ってお届けするということで、ローカル5Gを体感しながら進めていきたいと思います。本日出演される方は最前線で取り組んでいらっしゃる方ばかりですので、皆さんもどうぞお楽しみください。」

そして第1部は、基調講演として東急株式会社の東浦亮典氏が出演。
東急の歴史や取り組み、描く未来、現在進行中の事業、まちづくりについてなど、さまざまなお話が高野氏との掛け合いを通して繰り広げられました。

東浦氏はスマートシティについて、このように語ります。
この10年間スマートシティ業界を見ていると、あまりうまくいっていないという印象がある。テクノロジーが前に出すぎていて、そこに暮らしている人たちのことをあまり見ていない。住民の方からすると、自分たちに無関係なところでまちづくりが議論されているという感覚がある。現に調査をしたところ、スマートシティについての市民の理解度や知名度は低かった。自治体や地域密着のデベロッパーがまちづくりのプレイヤーとなり、住民の方からの信用を築いていく。そして住民の方たちの幸せにつながるように、デジタルの力をうまく活用していくことが、今後のまちづくりに必要だと思う。」

また、まちづくりの一例として、東急が目指している渋谷のまちづくり戦略『Greater SHIBUYA 2.0』について紹介しました。Greater SHIBUYAとは、渋谷駅から半径2.5キロ圏内を『広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)』と定義し、“面”としてのまちづくりを推進。 人と文化がスムーズに流動する広い意味での渋谷の魅力向上を図るという構想です。
『Greater SHIBUYA 1.0』では、従来からの『遊ぶ』街ということに加えて、『働く』場所としてのまちづくりを展開。今ではオフィスビルがたくさん建ち、渋谷も働ける場所としてしっかりと認知されました。そして今後、重視していきたいのが『暮らし』。遠くから働きに来るという通勤モデルから、これからは足元に豊かな生活圏を作っていきたい。これを『Greater SHIBUYA 2.0』として進めています。東浦氏は「オフィスビルの周りにさまざまな方が住むことで、街に力強さが出る」と話しました。

それから東浦氏は、Tokyo 5G Boosters Projectの基盤となる5Gについて、こう語ります。
「当初5Gに対して抱いていた大きな期待が、思ったほど実現していないという印象を受ける。スマートシティと同様、技術が前に出すぎて人々が置きざりになっている気がする。だからといって私もがっかりしているわけではなく、今日のお話を参考にしていただき、もう少し5Gのユースケースを組み直すことができるといいのではないか。」

最後に、オンライン参加者からグローバル視点でのまちづくりについて問われ、東浦氏は「アフターコロナで、今後どんどん渋谷に人を集め、起業やサービス展開などのサポートをしていくためにも、グローバル化は重要視している。イノベーションには多様性が大事と言いながら、やはりまだまだ日本人中心なのが現状。海外の方に、観光だけではなくビジネスシーンにも参加していただくというのが、これからのあるべき姿だと思う。」と答え、基調講演を締めくくりました。

そして第2部は、Tokyo 5G Boosters Projectにおけるインフォシティグループの活動を紹介。

まずは、高野氏が全体の概要について説明しました。

続いてFLARE SYSTEMS・中川貴之氏とstu・黒田貴泰氏が、それぞれの事業内容について紹介しました。

FLARE SYSTEMSは、大学や研究機関発の5GやBeyond 5Gといった次世代モバイル通信技術を社会に普及させることで『通信の民主化』を推進。スタジオにも設置されたローカル5Gソフトウェア基地局は、さまざまなシーンで活用され、令和4年度のドラマ映像制作における総務省実証にも採用されました。この映像制作では、カメラのケーブルレス化によって今までカメラマンが動けなかったところまで活発に動けるようになり、よりリアリティあふれる映像撮影が可能に。その他にも、医療の分野では手術現場を映して、遠隔でいろいろなお医者さんからの指示を受ける遠隔医療での活用。さらに、街の安心・安全を守る監視の分野での活用など、さまざまな分野で地域における実証実験を進めています。

>株式会社FLARE SYSTEMS・中川貴之さんインタビューレポートはこちら

stuは、『エンターテイメントを再発明する』をテーマに、クリエイティブとテクノロジーの共振を図りながら事業を展開。メタバースやクラウドレンダリング、ローカル5Gを使ったソリューションの開発など多面的にアウトプットし、世界基準のクリエイティブを目指しています。また、複数人の脚本家が集まってより良い作品を作り上げるライターズルーム、主にライブシーンで活用されるプリビジュアライゼーションなどの技術を導入して、コンテンツ制作における新しいワークフローを確立。さらに、7人組のダンス&ボーカルグループ『BE:FIRST』のミュージックビデオを制作・プロデュース、グローバルスタンダードで通用する映像編集スタジオの設立、メタバース空間への歴史文化財の保存を目的とした京都府亀岡市デジタル文化資料館の構築など、さまざまな事業を進めています。

>「SPECIAL SESSION by stu」イベントレポート第1弾はこちら
>「SPECIAL SESSION by stu」イベントレポート第2弾はこちら
>「SPECIAL SESSION by stu」イベントレポート第3弾はこちら

そして第3部は、「まちづくりとエンターテイメントの未来」と題してトークセッション。第2部に出演した中川氏と黒田氏に加えて、東急株式会社の根本敬太氏とKDDI株式会社の下桐希氏が出演しました。

まず根本氏は、まちづくりにおける5Gの取り組みについて説明。渋谷区との包括連携協定締結、基地局シェアリングサービスの開始、鉄道業務の高度化に向けた実証などを事例として紹介しました。

続いて下桐氏は、KDDIが進めている『αU(アルファユー)』を例に、5G×Web3のエンターテイメントについてお話しました。この『αU』とは、KDDIが2023年3月7日に始動した、現実と仮想を行き来する新しい世代に寄り添い、誰もがクリエイターになりうる世界に向けたWeb3サービスのこと。メタバース、ライブ配信、バーチャルショッピングなど、さまざまなサービスを提供します。下桐氏は、「今後、新しいエンターテイメントの創出に5Gがどんどん活用されていく。このTokyo 5G Boosters Projectにおいても、同じく連携事業者である東急さん、そしてスタートアップの皆さんの技術を結集させて、新しい体験を作っていきたい。」と話しました。

そして中川氏は、今後のシステム開発の展望について、「インフラを開発する立場から見ると、ネットワークだけを見ていてはダメ。どういった使い方をするか、何に使われるかということにチューニングを合わせながら開発していくことが必要。今後は、システム利用者の方たちのニーズをしっかりと汲み取り、フィードバックを行うことで、より良い開発につなげていきたい。」と話しました。

また黒田氏は、今後のクリエイター育成について、こう語ります。
「ちょうど今、撮影しているこのオフィスもそうだが、スタジオ・コミュニティスペース・シェアオフィスが一体となったクリエイターを育てる基地のようなものを作りたいと考え、取り組みを進めている。この場所が、教育と企業を連携させる役割を担う。そして、ここにクリエイターが集まることで、街の文化が生まれていく。それが産業全体の底上げに繋がり、まちづくりにも寄与していければいいなと考えている。」

これを受けて、根本氏は「街にクリエイターの方たちが集まることで、街全体の魅力が高まる。働ける環境、そして住んでいただける環境を整えていきたいと思っているので、黒田さんや皆さんと連携して進めていきたい。」と話しました。

このような皆さんのお話を聞いて、最後に高野氏は「今回、5Gのユースケースがリアルに伝えられる場になった。本日のお話を踏まえて、今後も取り組みを進めていきたい。」と話し、今回のイベントを締めくくりました。

来年度のキックオフの場ともなった今回のイベント。新たな体験の創出、より魅力的なまちづくりに向けて、今後もそれぞれが連携しながら取り組みを続けていきます!

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