【Interop Tokyo 2026】
AIとインターネットの次章。
~Internet for AI, AI for Internet.~
国内最大級のICTイベント「Interop Tokyo 2026」が、2026年6月10日から12日の3日間にわたり幕張メッセにて開催されました。
「Interop Tokyo」は、インターネットテクノロジーの進化と共に歩んできた、日本を代表する歴史あるICTイベントです。毎年、国内外の主要なICT関連企業が一堂に会し、最新のネットワーク技術、クラウドサービス、セキュリティソリューション、AI、IoTなど、幅広い分野の技術展示が行われます。
業界の専門家やリーダーが集い、未来のICT社会について深く議論する、貴重な情報交流のプラットフォームとしての役割も担っています。

本年のテーマは「AIとインターネットの次章。~Internet for AI, AI for Internet.~」と設定され、AIが社会基盤へと浸透する中でのパラダイムシフトが各所で議論されました。
登録来場者数は143,312人を記録し、AI実装に向けたインフラ投資に対する市場の強い熱量がうかがえる結果となっています。
主要なコンテンツ
● 展示会(Exhibition)
会場では、国際展示場ホール3~8および国際会議場を舞台に、多様なテーマのブースが設けられました。「AIとインターネットの次章。~Internet for AI, AI for Internet.~」をテーマに、AI、IoT、クラウド、エッジ、サイバーセキュリティといった幅広い分野を網羅する展示が展開されました。具体的な展示内容は多岐にわたり、特に「AI NATIVE EXPO 2026」が新設されるなど、AIを活用したソリューションや次世代ネットワーク関連の技術が注目を集めました。
● ShowNet(ショーネット)
Interop Tokyoの最大の特徴が「ShowNet」です。これは、会場全体を網羅する巨大なライブネットワークを、イベント期間中に約400名のトップエンジニアたちが実際に構築・運用するプロジェクトです。総額8000万ドルを超える最新のネットワーク機器や技術が導入され、各出展ブースのデモンストレーションを支える基盤となりました。ShowNetは、技術者にとっては最先端のネットワーク構築・運用技術を学ぶ場であり、来場者にとっては、実稼働する巨大ネットワークの裏側を垣間見ることができる貴重な体験の場です。
● カンファレンス(Conference)
会期中、複数の会場で専門性の高いカンファレンスセッションが開催されました。業界の第一線で活躍する識者や企業のキーパーソンが登壇し、最新の技術トレンド、市場動向、導入事例、そして未来の展望について講演を行いました。質疑応答の時間も設けられ、参加者が疑問点を直接質問し、深い知見を得る機会となりました。
● Keynote Speech(基調講演)
開催期間中には、特に注目度の高いトップリーダーや著名な研究者による基調講演も行われました。彼らの講演は、業界全体の方向性や、AIネイティブ時代に向けたインフラ戦略など、今後の社会にICTがもたらす影響について、示唆に富んだ洞察を提供しました。
ワット・ビット連携とデータセンターの未来

会期初日である6月10日にRoom YEにて開催されたカンファレンス「ワット・ビット連携(2):データセンター・デジタルインフラ ~ 最新 実証プロジェクトと将来展開 ~」の内容をレポートします。
AIネイティブなデータセンタービジネスが、従来の超巨大データセンターによる一極集中から分散化へと舵を切る中、ワークロードシフト技術を活用した新しいコンピューティングサービスの実証プロジェクトと将来展開について議論が交わされました。
本セッションは、産学の最前線でインフラ変革を牽引する以下の4名により進行されました。
● Speaker
高野 雅晴(株式会社ビットメディア 代表取締役社長 / 株式会社MESH-X 代表取締役)
志倉 喜幸 氏(株式会社ハイレゾ 代表取締役)
田中 正博 氏(東京電力パワーグリッド株式会社 経営企画室チーフストラテジスト)
● Chair
江崎 浩 氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授)
GPU資源の「コモディティ化」とグローバルサウスへの展開
株式会社ハイレゾの志倉氏は、世界的な計算力(GPU)需要の急増と市場の現状について報告しました。志倉氏によると、サーバーの発注から納品までのリードタイムは1年規模に長期化し、レンタル単価も急騰するなど、計算力の確保が極めて困難な状況にあります。

これに対し、ハイレゾ社は廃校などの遊休資産と地域電力を活用し、AI処理に特化したGPU専用データセンターを構築する「香川モデル」を展開しています。
さらに、このモデルは国内に留まらず、水力発電による再生可能エネルギーが豊富なブータンや、IT人材を擁するインド等のグローバルサウス地域への展開が進められています。
日本の高度なクラスタリング技術と冷却等のデータセンター運用ノウハウを輸出することで、計算力そのものを石油のような「直価で動く商品」として国際流通させる未来図が提示されました。
ワークロードシフトによる計算の最適化
続いて、インフォグループのビットメディア代表であり、新たに株式会社MESH-Xを立ち上げた高野から、余剰電力を活用した「ワークロードシフト」の具体的な実証成果について解説しました。
高野は2020年頃より、再生可能エネルギーの出力制御(余剰電力)問題に着目し、電力が余っている地域でGPUを稼働させるプラットフォーム構想を推進してきました。直近では、SINET(学術情報通信ネットワーク)を介して接続された東京大学(MDX)と北海道大学の計算資源を用い、電力の卸スポット価格が安い地域へ自動的に計算タスクを振り分ける実証実験を実施し、一定の成果を収めています。

さらに、民間企業である富士通のデータセンターとも連携し、再生可能エネルギーが余剰傾向にある北関東へ計算処理を移動させることで、逆潮流による系統混雑の緩和を図る実証も進められています。
高野は、異種の計算機環境や複数ステークホルダーを跨いだスケジューリングが今後の基盤となると指摘し、将来的には海外からの計算需要を日本国内で受け入れる「計算需要のインバウンド」体制を構築する必要性を力説しました。
空間的エネルギーシフトとキャンパスGXの社会実装
東京電力パワーグリッドの田中氏からは、インフラ事業者の視点に基づくデータセンターと地域のエネルギー連携について語られました。
従来のエネルギーマネジメントは蓄電池などを活用した「時間的なシフト」に限られていましたが、複数のデータセンター間で計算処理を移動させる高野のワークロードシフト技術により、エネルギー需要の「空間的なシフト」が可能になるという画期的な概念が提示されました。

具体的な取り組みとして、東京大学GXセンターが推進するプロジェクトが紹介され、北海道のバイオマス発電等で作られた電力を送電線で東京へ送るのではなく、北海道内のデータセンターで計算処理を行い、そのデータのみを光ファイバーで東京へ送る「Internet of Function」の構想が進められています。
また、GPUの冷却過程で発生する排熱を、農業や陸上養殖などの温度管理に再利用することで、データセンター自体を分散型電源や熱源として地域社会の循環エコシステムに組み込むモデルも紹介され、データ連携基盤の重要性が強調されました。
データセンターのこれから
AI時代におけるデータセンターは、単なる計算基盤の枠を超え、国家のエネルギー戦略や地域の産業基盤と不可分な存在となりつつあります。志倉氏が示すグローバルな計算力市場の形成、高野が社会実装を進めるワークロードシフト技術、そして田中氏が描くデータとエネルギーの空間的再配置は、いずれも「ワット・ビット連携」がもたらす次世代デジタルインフラの確かな青写真です。国内のリソース制約を逆手にとり、新たな価値創出へ挑むプレイヤーたちの動向が期待されます。

左から、東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長・岡本 浩 氏、ハイレゾ 志倉 氏、東京電力パワーグリッド 田中 氏、ビットメディア 高野
※岡本 氏は、書籍『経営に生かす 生成AIエネルギー論』で高野との共著者

左から、東京電力パワーグリッド 田中 氏、東京大学 江崎 教授、ビットメディア 高野