「InfoComm 2025」現地レポート:来場者増と進化するAVソリューション

当サイトで開幕の様子をお届けした「InfoComm 2025」の公式データが発表され、登録者数・来場者数ともに前年を上回る盛況ぶりとなりました。
6月7日から13日にかけて開催された「InfoComm 2025」では、登録者総数が39,579人に達し、97カ国から合計30,998人が来場。来場者数は2024年比で約700人増加し、コロナ禍からの市場回復が順調に進んでいることを示しています。
また、特筆すべきはエンドユーザーの割合です。2025年は来場者(確認済)の35%を占め、2024年の29%から大幅に増加しました。これは、開催地オーランドの特性が、教育機関、礼拝所、小売、ホスピタリティ、企業といった多様なエンドユーザー層を引きつけたためと考えられます。主催者側も、オーランド開催はエンドユーザーが増加する傾向にあると認識しているようです。
一方、国際来場者の比率は18%と、2024年の23%から減少しました。これは、主催のAVIXAが本展示会を「北米最大のプロAVショー」と位置づけていることや、近年の国際的な渡航動向が影響しているものと考えられます。
Best of Show Award受賞製品
InfoCommでは、その年を代表する革新的な製品やソリューションに「Best of Show Award」が授与されます。本アワードは複数の業界メディア(例: AV Technology, Sound & Video Contractor, Tech & Learning, Mixなど)が共同で主催し、AV業界の専門家や技術ジャーナリストによって選定されます。
ここでは、受賞製品の一部をご紹介します。

Barco ClickShare Hub Pro
高度なワイヤレス会議機能とルーム管理機能を組み合わせ、ハイブリッド会議の体験を向上させます。

Epson PowerLite L795SE 7,000-Lumen Short Throw 3LCD Laser Projector with 4K Enhancement
高輝度・短焦点でありながら、4K Enhancement技術による高精細な画像表示を実現した軽量・コンパクトなプロジェクターです。

Neat Board Pro
65インチの4Kマルチタッチディスプレイ、高性能カメラ、強力なオーディオ、コラボレーションソフトウェア(Zoom RoomsまたはMicrosoft Teams Rooms)が一体化しています。

Aurora Multimedia SmartSpeak
従来の会議用マイクに不可欠だったマイクアームを不要にした画期的な設計と、コントロールシステムとの連携が特徴です。

Shure Microflex Wireless (MXW) neXt 2/4/8
Shureが誇る高いオーディオ品質をワイヤレスで実現し、対面・リモート双方の参加者に明瞭で自然な音声を提供します。

HP Dimension with Google Beam
HPとGoogleが共同開発する、空間コンピューティング(Spatial Computing)とコラボレーションに特化したソリューションです。
これらの受賞製品からは、現代プロAV業界の方向性と、ハイブリッドワーク時代のニーズへの適応が見て取れます。特に、AIを単なる付加機能ではなく、製品の核となるインテリジェントな機能として統合し、ハイブリッド会議や共同作業の質を向上させるソリューションが高く評価される傾向にありました。
大規模会議室向けのソリューション拡大
会場では多様な製品が展示されていましたが、中でも際立っていたのが「会議システム」関連のソリューションです。他のプロAV展示会でも会議システムは主要なテーマですが、InfoCommでは特にその存在感が大きかったように感じます。これまでは個人や少人数での利用を想定した製品が主流でしたが、今回は大人数が集まる空間に対応したソリューションが注目を集めており、市場の進化を実感しました。


例えば、2月開催の「ISE 2025」にも出展していたYealinkは、AIを活用した最新のコラボレーション機能を備えるProAVシリーズを発表。その一つである天井埋め込み型の「シーリングマイク/スピーカー」は、参加者の位置を自動で特定し、その場所へ音声を届けたり、逆にその位置の音声をクリアに収音したりする指向性技術が特徴です。さらに、直感的なUIで操作できる設計システムも提供され、カメラやマイク、スピーカーの最適な配置設計を容易に行えるようになっています。
>「ISE 2025」でのYealinkのレポート記事はこちら

InfoComm 2026はラスベガスで開催
InfoComm 2025は、プロAV業界がコロナ禍から力強く回復し、さらなる進化を遂げていることを明確に示したイベントとなりました。特に、オーランド開催ではエンドユーザーの参加が過去最高を記録し、業界のソリューションがより幅広いビジネスニーズに浸透しつつある現状が浮き彫りになりました。
本稿では紹介しきれませんでしたが、高精細LEDディスプレイ、没入型オーディオ、インタラクティブサイネージなど、視覚と聴覚に訴える豊かな体験を提供する技術の進化にも、今後ますます期待が膨らみます。
次回の「InfoComm 2026」は、6月13日から19日までラスベガス・コンベンションセンターで開催されます。
来年のイベントでは、今回見られた技術の進化がどのように新たなビジネスチャンスへと結びつくのか、そしてAVプロフェッショナルがこの新時代にどのような価値を創造できるのか、その答えが示されることでしょう。ぜひご注目ください。